Santa Works.
暮らし / 数えた

値上がりしていたのは、
売りに出された家だけでした

家の値段が上がっている、という話をよく聞きます。私も、そういうものだと思っていました。 ただ、空き家も過去最高だと聞きます。余っているのに上がるというのが、どうもうまく飲み込めませんでした。 それで、総務省の住宅・土地統計調査と、国土交通省の不動産価格指数を開いてみました。 結論から書くと、私の飲み込めなさは、半分は思い込みでした。 そして残りの半分は、思い込みではありませんでした。

Santa Works2026.08.03読了 約6分出典つき / 一次資料から
空き家率13.8%900万2千戸。数も率も過去最高です
うち、市場に出ていない385.6万戸賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた残りです
1世帯あたりの住宅1.161968年から一度も1.00を下回っていません
マンションの価格指数225.1戸建住宅は121.9。どちらも2010年=100です

この記事のポイント

  1. 01空き家は900万2千戸、空き家率13.8%。どちらも過去最高でした。
  2. 02ただし家が余っているのは最近の話ではなく、1968年から55年以上つづいている状態でした。
  3. 03値段は上がっています。ただし上がり方が、家の種類で倍ちがいました
  4. 04そして指数は実際に取引が成立した家から作られています。 売りに出していない385万6千戸は、そこに出てきません。
まず、数
01

900万2千戸

FIG 01
空き家は45年で3.4倍になりました
総務省「住宅・土地統計調査」表2-1
0200万400万600万800万1000万1978198319881993199820032008201320182023267万9千900万2千385万6千空き家(全体)賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家
空き家(全体)賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家2023年 900万2千戸うち 385万6千戸05001000万戸1978199320082023
濃い赤が「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」です。薄いほうの棒(空き家の総数)の中に入っている数で、別勘定ではありません。

総務省の住宅・土地統計調査は、5年に1度おこなわれます。 いちばん新しいのは令和5年(2023年10月1日現在)の調査です※1

そこに載っている空き家の数が、900万2千戸でした。 前回(2018年)の848万9千戸から、51万3千戸ふえています。 空き家率は13.8%。2018年の13.6%から0.2ポイント上がって、 数も率も過去最高です。

13.8% という数字は、少し遠く感じます。およそ7.2戸に1戸と言い換えると、たぶん近くなります。

ただ、この900万2千戸は、ひとかたまりではありませんでした。 内訳は、入居者を募集中の賃貸用、買い手を募集中の売却用、別荘などの二次的住宅、 そしてそのどれでもないものに分かれています。

最後のものが385万6千戸。総住宅数の5.9%にあたります。 前回の348万7千戸から、36万9千戸ふえています。

原典は、この区分をこう説明しています

「賃貸用の空き家、売却用の空き家及び二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(注:空き家の種類の判断が困難な住宅を含む。)」
つまり「誰も帰ってこない家」ではありません。 帰ってくる予定の家も、壊すと決まった家も、判断がつかなかった家も入っています。 共通しているのは、いま市場に出ていないということだけです。

この記事で見ていくのは、この385万6千戸のほうです。

思っていたより、前から
02

家は、足りている

FIG 02
1世帯あたりの住宅数が1.00をこえたのは、1968年でした
総務省「住宅・土地統計調査」表1
0.901.001.101.20戸/世帯1.00=住宅の数と世帯の数が同じ1968年 ここで上回った1.16戸1958197819982023⚠️ 1958・1963・1968年は沖縄県を含まない(原典の注)
戸/世帯0.901.001.101.201968年ここで上回った1.16戸1958197819982023⚠️ 1958・1963・1968年は沖縄県を含まない(原典の注)
総住宅数を総世帯数で割った値です。1.00 より上は、住宅の数のほうが多い状態。1968年に上回って以降、下回った年は一度もありません。

空き家がふえていると聞くと、家が余っていると考えます。それはそのとおりでした。 ただ、思っていたより、ずっと前から余っていました。

同じ調査で、住宅の数と世帯の数を並べられます。総住宅数は6,504.7万戸 (前回比 +4.2%・+263万9千戸)、総世帯数は5,621.5万世帯 (+4.1%・+221万4千世帯)。住宅のほうが883万2千戸多いことになります。

面白いのはここからで、この逆転は1968年に起きています※2。1963年の調査までは、世帯の数のほうが多かった。 それ以降、住宅の数が世帯の数を下回った年は、一度もありません。 いまは1世帯あたり1.16戸です。

つまり「空き家がふえた」は最近の話ですが、「家が足りている」のほうは、55年以上つづいている状態でした。

なぜそうなっているのかは、書きません

私が調べたのは数字までで、理由のほうは確かめていないからです。足りているという事実だけを置きます。

値段のほうを見る
03

それでも、値段は上がっている

では値段はどうか。国土交通省が毎月出している不動産価格指数があります。2010年の平均を100とした指数です※3

いちばん新しい公表値は、令和7年12月分でした。住宅総合 148.0。2010年から、およそ1.48倍です。

余っているのに上がっている。ここまでは、聞いていたとおりでした。

一度だけ、割ってみる
04

同じ「家の値段」で、上がり方が倍ちがいました

FIG 03
マンション2.25倍、戸建1.22倍
国土交通省「不動産価格指数」令和7年12月分
2010年平均=100100(2010年)マンション(区分所有)225.1戸建住宅121.9住宅地119.8(住宅総合)148.0令和7年12月分・季節調整値(速報値)
2010年平均=100マンション(区分所有)225.1戸建住宅121.9住宅地119.8(住宅総合)148.0100(2010年)令和7年12月分・季節調整値(速報値)
いちばん下の薄い帯が「住宅総合」です。ふだん「家の値段」として目にするのは、たいていこの数字のほうです。

ところが、この指数は3つに分かれています。同じ月の値を並べると、こうなります。

令和7年12月・季節調整値指数2010年から
マンション(区分所有)225.1約2.25倍
戸建住宅121.9約1.22倍
住宅地119.8約1.20倍

住宅総合の148.0は、この3つを合わせた数字です。ただし単純な平均ではありません。 作成方法によれば、毎月の取引総額で重みをつけた加重平均です※4。3つをそのまま平均すると155.6になります。 公表値が148.0なのは、そういう理由です。

2.25倍と、1.22倍。どれも上がってはいます。ただ、同じ「家の値段」という言葉で呼んでいたものが、 中では倍ちがっていました。

戸建も15年で2割強、上がっています。上がっていない、という話ではありません。マンションの隣に置くと小さく見えるだけです。

そしてもうひとつ。さきほどの385万6千戸を建て方で分けると、一戸建が285万1千戸でした。およそ4分の3です (共同住宅は84万8千戸)※1。私が思い浮かべていた「実家」も、マンションではありませんでした。

私が飲み込めなかった「余っているのに上がる」は、半分は言葉のせいでした。「家の値段」がひとつの数字だと思っていたのが、まちがいでした。

作り方を読む
05

指数は「売れた家」しか測っていない

ここまでで納得しかけたのですが、もうひとつ気になることが残りました。この指数は、どうやって作っているのか。

国土交通省が公開している「不動産価格指数(住宅)の作成方法」に、 はっきり書いてありました※4。 「取引事例データの価格は、実際に取引されて成立した、 土地又は土地・建物一体の価格である」。

もとになるデータは、①登記異動情報 → ②アンケート調査票 → ③現地調査の3段階で作られています。出発点は、所有権が動いた記録です。

売られていない家には、値段がつきません。

値段がつかないので、指数に入りません。指数に入らないので、 統計のどこを探しても出てきません。385万6千戸は、いま市場に出ていない家です。 だから構造として、この数字には現れません。

出てこないことと、価値がないことは別の話です

指数に現れないのは、取引されていないからであって、 それ以上の意味はありません。ここは混ぜないように書いておきます。

そして、もうひとつ。

この指数は、いま止まっています。令和8年1月分以降の公表が延期されていて、理由は 「算出時のプログラムに不具合が発生しており、原因の確認作業を行っております」 と書かれています。再開の日は、まだ決まっていません (令和8年7月29日のお知らせ)※5

だから私がここに書いた148.0も、いま更新が止まっている系列の、いちばん新しい値です。

おわりに
06

実家に置いてきたもの

ここまで385万6千戸の話をしてきましたが、私の実家は、その中に入っていません。いま母が住んでいます。

思っていたよりずっと元気で、この前は「建て直したい」とも言っていました。 空き家の数を数えたあとでその話を思い出すと、少し妙な気持ちになります。あの家は、この記事で見てきたどの区分にも当てはまりません。空き家でもなく、売りに出してもいない。人が住んでいる家です。

置いてきたのは、アルバムでした。紙に焼いた写真を、台紙に貼ってあるものです。

いま私が撮っている写真は、印刷すらしていません。だから置いてくることも、持ち帰ることもできません。 どこかのサーバーと、手元の端末の中にあります。

置いてきたものが、いまもそこにあるのは、誰かがそこに住んでいるからでした。 私が何かをしてきたからではありません。

限りある命なのは、分かっています。分かってはいますが、それとは別に、 いつまでも元気でいてほしいと思っています。

だから私は、あの家について、まだ何も決めていません。

統計は、家が何戸あるかを数えます。いくらで売れたかも数えます。
そこに誰が住んでいて、どれだけ元気かは、数えません。

調べる前、私は「家の値段が上がっている」という一つの話だと思っていました。 開いてみたら、二つの話でした。上がり方が倍ちがっていたという話と、 値段の話に出てこない家が385万6千戸あるという話です。 値段がつくのは、売りに出された家だけでした。 私の実家は売りに出していません。まだ人が住んでいるからです。

だから、あの家がいくらなのかは、どの統計にも書いてありません。 書いていないことが、悪いわけではありません。測るとはそういうことだ、というだけです。 数えないままでいいこともある、と思いました。

この記事の数字は、すべて出典の一次資料から直接転記しています。 間違いを見つけたら教えていただけるとありがたいです(contact@santaworks.net)。直します。

参考文献・出典

  1. ※1 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果。 空き家数・空き家率、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の数と建て方別の内訳は、 この確報の結果の概要(PDF)から転記しています。 調査時点は2023年10月1日現在です。
  2. ※2 同「住宅・土地統計調査」時系列統計表(1958年〜2023年)。 総住宅数・総世帯数の推移と、図02の1世帯あたり住宅数はここから算出しました。1958・1963・1968年は沖縄県を含みません(原典の注)。
  3. ※3 国土交通省「不動産価格指数(令和7年12月・令和7年第4四半期分)を公表」 (令和8年3月31日)。本文の指数はすべて2010年平均=100季節調整値です。
  4. ※4 国土交通省「不動産価格指数(住宅)の作成方法」(令和2年8月)。 取引事例データの定義、①登記異動情報→②アンケート調査票→③現地調査という 作成の順序、住宅総合が取引総額による加重平均であることは、この資料に基づきます。
  5. ※5 国土交通省「不動産価格指数」公表延期のお知らせ(令和8年7月29日)。 延期の対象は令和8年1月分以降です。

※ この記事は、空き家を問題として論じるものではありません。 数がどうなっているかと、値段の指数が何を測っているかを並べただけです。
「空き家」には、賃貸用・売却用・二次的住宅が含まれます。この記事が扱う385万6千戸は、それらを除いた残りであって、空き家全体ではありません。 ここを混ぜると数字が2倍以上ずれます。
※ 住宅・土地統計調査は5年ごとの調査です。 数値は2023年10月1日現在で、2026年時点の状況とは異なります。
※ 不動産価格指数は速報値で、 初回公表後3か月間は改訂されます。本文の148.0なども確定値ではありません。
※ 指数に現れないことは、その家に価値がないことを意味しません。取引されていないから測られていない、というだけです。

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