飲食店の集客、グルメサイトだけに
委ねてよいのでしょうか。
「Instagramと食べログがあれば、自社ホームページは要らないのでは」——飲食店の集客をめぐって、しばしば語られる問いです。実際、グルメサイトを使う飲食店は約63%にのぼる一方、自社ホームページの保有は50.2%。この「依存」と「未整備」のギャップは、公開データにもあらわれています。本記事では結論を押し付けず、公開データだけを並べて、その判断材料を整理します。
出典 ※1(公正取引委員会2020)/ ※2 ※調査・母数が異なる数値の並置です
この記事のポイント
- 01グルメサイト利用は約63%、自社HP保有は50.2%。依存と整備状況にギャップがある。
- 02手数料・表示順位・口コミ評価は、構造的にプラットフォーム側に依存している。
- 03自社サイトは予約経路として既に機能し(一部調査で約34〜46%)、顧客データも自店に蓄積される。
多くの飲食店がグルメサイトに依存している
公正取引委員会が2020年に実施した「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査」によりますと、約63%の飲食店が集客を目的として何らかのグルメサイトを利用しており、そのうち約57%が「グルメサイトの影響力は非常に大きい、または大きい」と回答しています※1。一方で、自社ホームページを保有している飲食店は50.2%というデータもあります※2。
依存度と、自社インフラの整備状況
それぞれ調査・母数が異なる数値の並置です(比率の直接比較ではありません)
手数料と表示順位の構造
前述の調査では、グルメサイトの多くが予約客お一人あたり50〜200円程度の送客手数料を飲食店から徴収している実態が報告されています。ポイントプログラムの原資も、飲食店側の負担でまかなわれるケースが多いとされます※1※3。
また表示順位については、高額な掲載プランを契約している飲食店ほど、検索結果の上位に表示されやすい構造があると報告書は指摘しています。公正取引委員会は、「集客のために表示順位を上げなければ」という圧力が高額プラン契約を事実上強いる可能性があるとし、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当するおそれがあると言及しています※1※3。契約面でも、約11%の飲食店が、グルメサイト側からの一方的な契約内容の変更を経験したと回答しています※1※3。
口コミ・評価は自店でコントロールしにくい
同調査では、無断で掲載された情報により不利益を被った経験があると回答した飲食店は約29%にのぼりました。そして、削除・修正を求めても必ずしも解決するとは限らない、という実態がうかがえます※1※3。
「無断掲載で不利益」を受けた後、どうなったか
公正取引委員会 調査の回答比率より(各項目は母数が異なります)
この構造がもたらした実際の紛争事例として、グルメサイト最大手が評価点の算出アルゴリズムを変更した結果、店舗の評価平均が下落したとして、店舗運営企業が損害賠償を求めた訴訟があります。
消費者の店探し行動にも変化が
飲食店向け予約・顧客管理システムを提供するTableCheck社の調査では、グルメサイトの評価・ランキングを「信頼していない」「気にしていない」と回答した飲食店が、合わせて約7割にのぼりました※5。消費者側も、評価の受け止め方に次のような傾向が見られます。
消費者は、グルメサイトの評価をどう受け止めているか
TableCheck 消費者調査より※6(横軸=回答者に占める割合)
SNSは情報収集の入口として使われる一方、最終的な検討・確認の段階では検索エンジンや地図アプリが使われるケースが多いとされます※7。「見つけてもらう入口」と「確かめてもらう受け皿」は、必ずしも同じ場所ではない、ということです。
この流れは、より新しい調査でさらに鮮明になっています。2022年の調査では、飲食店探しに使うツールとして「Google」(86.1%)が「グルメサイト」(61.3%)を初めて上回りました※12。
【2022年】飲食店探しに「使うツール」
TableCheck 意識調査(2022年6月・全国の消費者1,100名)より※12
予約経路としての自社ホームページ
ネット予約の受付経路をたずねた調査では、大手グルメサイトに続き、自社ホームページが34.1%という結果でした※8。大手には及ばないものの、既に一定の予約経路として機能していることが読み取れます。
ネット予約の受付経路(複数回答)
飲食店ドットコム「飲食店リサーチ」より※8
グルメ
ホームページ
より新しい2025年の調査でも、この傾向は続いています。ネット予約に使うメディアは食べログ(60.5%)に次いで、店舗ウェブサイトが2位(46.5%)に入りました※13。
【2025年】ネット予約に「使うメディア」
COLLINS「飲食店の選び方」調査(2025年2月発表)より※13
ウェブサイト
※ ①の34.1%(別調査)とは調査主体・設問・時期が異なるため、厳密な同一時系列の比較ではありません。
見えてきた構造
ここまでのデータを並べると、両者の役割の違いが、次のように整理できます。
- ◎初期コスト・拡散力高い(無料で始めやすく利用率も高い)
- △表示順位・評価プラットフォーム側の仕様に依存
- △手数料送客手数料等が発生
- △顧客データプラットフォーム側に蓄積
- ◎予約経路の実績大手3サイトで4〜5割
- △初期コスト・拡散力制作コストがかかる
- ◎表示順位・評価自店で完全にコントロール可能
- ◎手数料制作・運用コストのみ
- ◎顧客データ自店に直接蓄積される
- ○予約経路の実績約34〜46%(無視できない規模)
「どちらか一方」ではなく、「どう組み合わせるか」。
グルメサイト・SNSへの高い依存度と、そこで生じる手数料・表示順位・評価コントロールの構造的課題。一方で、自社ホームページが既に一定の予約経路・顧客接点として機能している実態。この両方を踏まえたうえで、最適なバランスは店舗ごとの事情によって異なります。本記事が、その判断材料の一つになれば幸いです。
参考文献・出典
- ※1 公正取引委員会「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書」(令和2年3月18日) jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/mar/200318-2.pdf
- ※2 株式会社hypex「飲食店のSNS運用で集客・売上を伸ばす方法と成功事例」 hypex.jp/articles/restaurant-sns-examples
- ※3 飲食店ドットコム ジャーナル「公取委がグルメサイトを調査。飲食店からはサイト上の表示順位に不満の声も」 inshokuten.com/foodist/article/5716/
- ※4 ITmedia NEWS「『食べログ』運営会社に3840万円の賠償命令 アルゴリズム変更→点数ダウンで客足減 東京地裁」(2022年6月) itmedia.co.jp/news/articles/2206/16/news187.html
- ※5 株式会社TableCheck プレスリリース「グルメサイト評価、『信頼していない』『気にしない』飲食店7割近く」 prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000023564.html
- ※6 飲食店ドットコム ジャーナル「グルメサイト離れが加速? テーブルチェックが飲食店と消費者に意識調査」 inshokuten.com/foodist/article/5622/
- ※7 株式会社TableCheck「【第2回グルメサイト意識調査】飲食店探しは『Googleマップ』『ウェブ検索』が急増」 tablecheck.com/ja/company/press/ota-survey-20210409/
- ※8 飲食店ドットコム ジャーナル「飲食店の『ネット予約』、店主が抱える悩みは?」 inshokuten.com/foodist/article/4826/
- ※9 株式会社TableCheck「TCinfographic|データでみる飲食業界とテーブルチェック」 tablecheck.com/ja/join/about-us/tcinfographic/
- ※10 日本経済新聞「食べログ逆転勝訴、点数修正は『合理的』 それでも戻らぬ口コミの信頼」(2024年1月・東京高裁判決) nikkei.com/article/DGXZQOUC034GG0T00C24A4000000/
- ※11 飲食店ドットコム ジャーナル/各種報道「食べログ訴訟、最高裁が店舗側の上告を退け運営会社の勝訴が確定」(2026年) inshokuten.com/foodist/article/7349/
- ※12 株式会社TableCheck「加速するグルメサイト離れ。『Google』利用率トップに。」(2022年8月・意識調査) tablecheck.com/ja/join/about-us/press/ota-survey-2022/
- ※13 COLLINS株式会社「【飲食店の選び方】2025年最新調査結果を発表!」(2025年2月) prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000135874.html
※ 本記事は公開されている調査・報道をもとに構成しています。各数値は出典元の調査時点のものであり、調査ごとに対象・母数・時期が異なります。特定のサービスを推奨・批判する意図はなく、最終的な判断は読者の皆様にお委ねしています。
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