調べたら、決められることが
1つも増えませんでした
最近になって、中学受験のことを考える場面が増えました。 といっても、何かを決めたわけではありません。話題が出るたびに、自分がまだ何も決めていないと気づく。それだけです。 できればしてほしい気もするし、無理にすることでもない気もする。 決める材料も持っていなかったので、まず、どれくらいの子がしているのかを数えました。
この記事のポイント
- 01全国では12人に1人。東京都では4〜5人に1人でした。
- 02同じ都内で16.7倍の開き。ただし「公立へ行った」は「受験しなかった」ではありませんでした。
- 03都外へ進学した子が、受験したのか引っ越したのかは分けられませんでした。
12人に1人
最初に知りたかったのは、そもそもどれくらい多い話なのか、でした。 周りで聞くと多そうに感じますが、それは自分の周りの話でしかありません。
文部科学省の学校基本調査に、中学校の生徒数を学年ごと・設置者ごとに数えた表があります※1。令和7年度の中学1年生は全国で1,018,443人。 そのうち私立は84,267人で、8.27%でした。 国立の8,684人を足すと9.13%になります。
およそ12人に1人。1クラス35人なら、3人ほどという規模です。 多いと言えば多いし、大半ではない、とも言えます。
「東京都は27%」は、私の知りたい数字ではありませんでした
同じ表には都道府県の行もあります。東京都を見ると、私立は27.3%。 全国の3倍以上です。ここで納得しかけました。
でも、表の作りを読んで、納得を取り消しました。 この調査は学校のある場所で数えています。 東京都の私立中学に通う1年生には、埼玉・千葉・神奈川から電車で通ってくる子が入っています。
私が知りたいのは、学校がどこにあるかではありません。ここに住んでいる子が、どうしているかです。
探し直して、東京都教育委員会の「公立学校統計調査報告書」に行き当たりました※2。 都内の公立小学校を卒業した子が、どこの中学校へ進んだかを数えた表です。こちらは通っていた小学校の場所で並んでいます。 学校のある場所ではなく、その子が暮らしている地域に近い数え方です。
令和6年度の卒業生は98,264人。私立へ進んだのは19,572人で19.9%。 国立と、あとで触れる都立の中高一貫を足すと21.9%になります。 4〜5人に1人です。
「東京の中学受験率」として世の中に出ている数字には、 この2つが混ざっています。どちらも正しく、どちらかが嘘というわけでもありません。 ただ問いが違います。自分の家の話をしたいときに近いのは、通っていた小学校で数えたほうでした。
同じ都内で、16.7倍
この表は、区市町村ごとに分かれています。せっかくなので、全部並べてみました。
いちばん高いところで52.3%、いちばん低いところで3.1%。同じ都内で16.7倍ありました。 上のほうは、2人に1人が受験しています。
並べてから、この図をどう読むかで少し悩みました。 高いところが熱心で、低いところがそうでない、という読み方は、たぶん違います。 通える範囲に学校が何校あるかが、そもそも違うからです。選べる数が違えば、選ぶ人の数も変わります。
並びは区市町村の順で、率の順ではありません。 地区名を出しているのは、読んだ方が自分の場所を探せるようにするためで、上下をつけるためではありません。この数字は、その土地に住む人の考え方を測ったものではないです。
「公立へ行った」は「受験しなかった」ではありませんでした
最初、私はこの表の「私立」の列だけを見ていました。受験といえば私立だろう、と思っていたからです。
表の下にある注を読んで、間違いに気づきました。都立の中高一貫校と、区立の中等教育学校は「公立」に入っています※2。当たり前といえば当たり前で、設置者は公立です。けれど入るには適性検査を受ける必要があります。
市部でよく効きました。ある市は私立だけなら15.1%ですが、 都立の中高一貫を足すと20.3%になります。私が見ていた列は、市部の受験をまるごと落としていました。
知らない土地の話ではありません。自分が数え方を選んだ結果、見えなくなっていたものです。 決めていないというのは、たぶんこういうことなのだと思いました。 何を見ればいいかを、まだ知らない。
この数字は、受験した人数ではありません
数え方をひとつ直したので、ほかも確かめました。そうしたら、この表で受験の多さを言い切ることはできないと分かりました。
いちばん上の線は、都外の中学校へ進んだ子を足したものです。 6年で21.8%から24.6%まで上がっています。 ところがこの列には、都外の私立へ進んだ子と、引っ越して都外の公立に入った子が、両方入っています。表に内訳はありません。分けられないことが分かっただけで、分けられませんでした。
だから、この線が上がっている理由も書けません。
ほかにも、実際より低く出ている理由が3つありました。
① 分母は公立小学校の卒業者です。私立の小学校に通っている子は、はじめから入っていません。
② 進学した先を数えた表です。受けて合格しなかった子は公立中学校へ進むので、この数には現れません。
③ 全国の数字には中等教育学校の前期課程が入りません。別の調査票で数えているためです。
つまり、実際に受験した子はここに出ている数より多い。どれくらい多いかは、どこにも書いてありませんでした。
分かったことと、分からなかったこと
数えるあいだ、ずっと同じことを考えていました。 この数字が高かったら、うちもそうするのだろうか。低かったら、しないのだろうか。
たぶん、どちらでもありません。私が知りたかったのは、周りがどうしているかではなかったのだと、 数え終わってから気づきました。
公開データは、よくできています。誰が数えたか、何を数えたか、何を数えていないかまで、 表の注に書いてあります。書いていないことは、書いていないと分かるようになっている。 それでも、この問いには答えてくれませんでした。答えられる種類の問いではないからです。
調べたら、周りが何をしているかは、はっきり分かりました。
自分がどうするかは、やっぱり分かりませんでした。
それが分かったことが、たぶん今回の収穫です。
この記事の数字は、すべて出典の一次資料から直接集計しています。 間違いを見つけたら教えていただけるとありがたいです(contact@santaworks.net)。直します。
参考文献・出典
- ※1 文部科学省「学校基本調査」令和7年度(確定値) 初等中等教育機関・専修学校・各種学校/学校調査票(中学校) 表番号75「学年別生徒数」(e-Stat)。 本記事の数値は、この表の計・国立・公立・私立の4シートから 第1学年(男+女)を取り出して独自に算出したものです。 国立+公立+私立が計と一致することを確認しています。なお、この表は学校の所在地で数えているため、都道府県別の行は 住んでいる場所の話とは比べられません(本文02)。使用したのは全国の行だけです。
- ※2 東京都教育委員会「令和7年度 公立学校統計調査報告書 【公立学校卒業者(令和6年度)の進路状況調査編】」 第1表「状況別卒業者数」。 区市町村別の率と「受験計」(私立+国立+都立の中高一貫)は、 この表から独自に算出したものです。 都立の中学校、区立および都立の中等教育学校、 区立および市立の義務教育学校への進学者が「公立」に含まれることは、 同表の注3に明記されています。
- 区市町村の選び方について: 卒業者が100人に満たない町村は、1人の増減で率が大きく動くため集計から外しました。 残った51区市町村で数えています。 図で並べた6地区は、区部と市部から3つずつ選んだもので、上位下位ではありません。
※ この記事は、中学受験をすすめるものでも、すすめないものでもありません。 進路の助言をする立場にないので、書いていません。
※ ここに出てくる率は、受験した子の割合ではありません。進学した先を数えたものです(本文05)。
※ 都教委の表が数えているのは、卒業した公立小学校の所在地です。学校選択制や越境通学があるため、 住んでいる場所と完全に一致するわけではありません。表の注にも住所の記載はありません。
※ 令和6年度の卒業生は、令和7年4月に中学校へ進学しています。 全国の数字は令和7年5月1日現在の中学1年生なので、同じ学年の子たちを、別の調査から見ています。
※ 「16.7倍」は、集計対象の51区市町村のうち、受験計がいちばん高い地区と いちばん低い地区の比です。順位を示すために出した数字ではありません。