Santa Works.
こども / 数えた

調べたら、決められることが
1つも増えませんでした

最近になって、中学受験のことを考える場面が増えました。 といっても、何かを決めたわけではありません。話題が出るたびに、自分がまだ何も決めていないと気づく。それだけです。 できればしてほしい気もするし、無理にすることでもない気もする。 決める材料も持っていなかったので、まず、どれくらいの子がしているのかを数えました。

Santa Works2026.08.02読了 約6分出典つき / 一次資料から
全国8.3%中学1年生のうち私立。12人に1人
東京都21.9%公立小を出た子のうち、国私立か都立中高一貫へ
いちばん高い地区52.3%2人に1人。いちばん低い地区は 3.1%
その開き16.7同じ都内・同じ制度のなかで

この記事のポイント

  1. 01全国では12人に1人。東京都では4〜5人に1人でした。
  2. 02同じ都内で16.7倍の開き。ただし「公立へ行った」は「受験しなかった」ではありませんでした。
  3. 03都外へ進学した子が、受験したのか引っ越したのかは分けられませんでした
まず、大きさ
01

12人に1人

最初に知りたかったのは、そもそもどれくらい多い話なのか、でした。 周りで聞くと多そうに感じますが、それは自分の周りの話でしかありません。

FIG 01
全国の中学1年生を100人に縮めると
学校基本調査 令和7年度
私立国立公立
私立が 8.27%、国立を足して 9.13%。 100人に丸めると私立 8 人・国立 1 人です。 中等教育学校の前期課程はこの「中学校」に入らないので、実際はここより少しだけ多くなります。

文部科学省の学校基本調査に、中学校の生徒数を学年ごと・設置者ごとに数えた表があります※1。令和7年度の中学1年生は全国で1,018,443人。 そのうち私立は84,267人で、8.27%でした。 国立の8,684人を足すと9.13%になります。

およそ12人に1人。1クラス35人なら、3人ほどという規模です。 多いと言えば多いし、大半ではない、とも言えます。

数字を探しに行く
02

「東京都は27%」は、私の知りたい数字ではありませんでした

同じ表には都道府県の行もあります。東京都を見ると、私立は27.3%。 全国の3倍以上です。ここで納得しかけました。

でも、表の作りを読んで、納得を取り消しました。 この調査は学校のある場所で数えています。 東京都の私立中学に通う1年生には、埼玉・千葉・神奈川から電車で通ってくる子が入っています。

私が知りたいのは、学校がどこにあるかではありません。ここに住んでいる子が、どうしているかです。

FIG 02
同じ「東京都の中学受験」が、資料によって別の数字になります
学校基本調査 / 東京都教育委員会
学校基本調査学校がある場所27.3%
都教委の進路調査通っていた公立小の場所21.9%
学校基本調査は学校のある場所で数えるので、東京都の私立中1年生には 埼玉・千葉・神奈川から通ってくる子が入ります。都教委の調査が数えるのは卒業した公立小学校の所在地で、住所そのものではありませんが、 暮らしている地域にはずっと近い。この記事はこの先すべて都教委の数字を使います。

探し直して、東京都教育委員会の「公立学校統計調査報告書」に行き当たりました※2。 都内の公立小学校を卒業した子が、どこの中学校へ進んだかを数えた表です。こちらは通っていた小学校の場所で並んでいます。 学校のある場所ではなく、その子が暮らしている地域に近い数え方です。

令和6年度の卒業生は98,264人。私立へ進んだのは19,572人で19.9%。 国立と、あとで触れる都立の中高一貫を足すと21.9%になります。 4〜5人に1人です。

同じ言葉で、違うものを数えている

「東京の中学受験率」として世の中に出ている数字には、 この2つが混ざっています。どちらも正しく、どちらかが嘘というわけでもありません。 ただ問いが違います。自分の家の話をしたいときに近いのは、通っていた小学校で数えたほうでした。

割ってみる
03

同じ都内で、16.7倍

この表は、区市町村ごとに分かれています。せっかくなので、全部並べてみました。

FIG 03
51区市町村を、1本の軸に並べる
東京都教育委員会 第1表(令和6年度卒業)
0%10%20%30%40%50%都全体 21.9%瑞穂町 3.1%文京区 52.3%
0%10%20%30%40%50%都全体 21.9%瑞穂町 3.1%文京区 52.3%
点ひとつが1区市町村です。上下の段は重なりを避けるためで、意味はありません。いちばん上と下で 16.7倍。 これは通える学校が何校あるかの差でもあります。どこが高いかを比べる図ではありません。

いちばん高いところで52.3%、いちばん低いところで3.1%。同じ都内で16.7倍ありました。 上のほうは、2人に1人が受験しています。

並べてから、この図をどう読むかで少し悩みました。 高いところが熱心で、低いところがそうでない、という読み方は、たぶん違います。 通える範囲に学校が何校あるかが、そもそも違うからです。選べる数が違えば、選ぶ人の数も変わります。

FIG 04
51区市町村ぜんぶ(並びは順位ではありません)
東京都教育委員会 第1表
千代田区45.0
中央区41.9
港区43.4
新宿区39.1
文京区52.3
台東区34.7
墨田区20.3
江東区31.0
品川区36.6
目黒区44.2
大田区22.6
世田谷区37.3
渋谷区38.6
中野区30.2
杉並区35.4
豊島区34.9
北区26.7
荒川区23.7
板橋区19.2
練馬区19.3
足立区12.9
葛飾区13.2
江戸川区11.5
八王子市9.0
立川市11.2
武蔵野市35.5
三鷹市24.0
青梅市5.2
府中市12.0
昭島市6.1
調布市20.2
町田市6.9
小金井市20.3
小平市13.9
日野市9.4
東村山市7.9
国分寺市16.9
国立市20.1
福生市7.1
狛江市16.9
東大和市7.3
清瀬市5.3
東久留米市8.1
武蔵村山市4.5
多摩市13.5
稲城市15.8
羽村市5.6
あきる野市4.9
西東京市15.6
瑞穂町3.1
日の出町4.0
グレーが私立、赤が国立と都立の中高一貫です。 縦の破線は都全体の 21.9%。卒業者が100人に満たない町村は、 率が暴れるので外しています。
この記事を、順位表として読まないでください

並びは区市町村の順で、率の順ではありません。 地区名を出しているのは、読んだ方が自分の場所を探せるようにするためで、上下をつけるためではありません。この数字は、その土地に住む人の考え方を測ったものではないです。

読み違えていた
04

「公立へ行った」は「受験しなかった」ではありませんでした

最初、私はこの表の「私立」の列だけを見ていました。受験といえば私立だろう、と思っていたからです。

表の下にある注を読んで、間違いに気づきました。都立の中高一貫校と、区立の中等教育学校は「公立」に入っています※2。当たり前といえば当たり前で、設置者は公立です。けれど入るには適性検査を受ける必要があります。

FIG 05
「公立へ行った」に、受験した子が混ざっています
東京都教育委員会 第1表 注3
文京区48.5 52.3
目黒区41.8 44.2
大田区21.1 22.6
三鷹市20.0 24.0
小金井市15.1 20.3
八王子市7.6 9.0
グレーが私立、赤が国立と都立の中高一貫。 都立の中高一貫と区立の中等教育学校は、表の上では「公立」に入ります。 市部ほどここが厚く、私立だけの率で並べると、市部の受験がまるごと落ちます。6地区は区部と市部から3つずつ選んだもので、上位下位ではありません。

市部でよく効きました。ある市は私立だけなら15.1%ですが、 都立の中高一貫を足すと20.3%になります。私が見ていた列は、市部の受験をまるごと落としていました。

知らない土地の話ではありません。自分が数え方を選んだ結果、見えなくなっていたものです。 決めていないというのは、たぶんこういうことなのだと思いました。 何を見ればいいかを、まだ知らない。

分からなかったこと
05

この数字は、受験した人数ではありません

数え方をひとつ直したので、ほかも確かめました。そうしたら、この表で受験の多さを言い切ることはできないと分かりました。

FIG 06
私立は令和5年で頭打ち。都外へ出る子だけが増えています
東京都教育委員会 第1表(令和元年度〜6年度)
16%18%20%22%24%26%令和私立だけ受験計+都外
いちばん上の線には、都外の私立へ進んだ子と、引っ越して都外の公立へ入った子が両方入っています。第1表にその内訳はありません。だから、この線が上がっている理由は分かりませんでした。

いちばん上の線は、都外の中学校へ進んだ子を足したものです。 6年で21.8%から24.6%まで上がっています。 ところがこの列には、都外の私立へ進んだ子と、引っ越して都外の公立に入った子が、両方入っています。表に内訳はありません。分けられないことが分かっただけで、分けられませんでした。

だから、この線が上がっている理由も書けません。

ほかにも、実際より低く出ている理由が3つありました。

どれも「実際はもっと多い」方向に効きます

① 分母は公立小学校の卒業者です。私立の小学校に通っている子は、はじめから入っていません。
② 進学した先を数えた表です。受けて合格しなかった子は公立中学校へ進むので、この数には現れません。
③ 全国の数字には中等教育学校の前期課程が入りません。別の調査票で数えているためです。

つまり、実際に受験した子はここに出ている数より多い。どれくらい多いかは、どこにも書いてありませんでした。

おわりに
06

分かったことと、分からなかったこと

数えるあいだ、ずっと同じことを考えていました。 この数字が高かったら、うちもそうするのだろうか。低かったら、しないのだろうか。

たぶん、どちらでもありません。私が知りたかったのは、周りがどうしているかではなかったのだと、 数え終わってから気づきました。

公開データは、よくできています。誰が数えたか、何を数えたか、何を数えていないかまで、 表の注に書いてあります。書いていないことは、書いていないと分かるようになっている。 それでも、この問いには答えてくれませんでした。答えられる種類の問いではないからです。

調べたら、周りが何をしているかは、はっきり分かりました。
自分がどうするかは、やっぱり分かりませんでした。

それが分かったことが、たぶん今回の収穫です。

この記事の数字は、すべて出典の一次資料から直接集計しています。 間違いを見つけたら教えていただけるとありがたいです(contact@santaworks.net)。直します。

参考文献・出典

  1. ※1 文部科学省「学校基本調査」令和7年度(確定値) 初等中等教育機関・専修学校・各種学校/学校調査票(中学校) 表番号75「学年別生徒数」(e-Stat)。 本記事の数値は、この表の計・国立・公立・私立の4シートから 第1学年(男+女)を取り出して独自に算出したものです。 国立+公立+私立が計と一致することを確認しています。なお、この表は学校の所在地で数えているため、都道府県別の行は 住んでいる場所の話とは比べられません(本文02)。使用したのは全国の行だけです。
  2. ※2 東京都教育委員会「令和7年度 公立学校統計調査報告書 【公立学校卒業者(令和6年度)の進路状況調査編】」 第1表「状況別卒業者数」。 区市町村別の率と「受験計」(私立+国立+都立の中高一貫)は、 この表から独自に算出したものです。 都立の中学校、区立および都立の中等教育学校、 区立および市立の義務教育学校への進学者が「公立」に含まれることは、 同表の注3に明記されています。
  3. 区市町村の選び方について: 卒業者が100人に満たない町村は、1人の増減で率が大きく動くため集計から外しました。 残った51区市町村で数えています。 図で並べた6地区は、区部と市部から3つずつ選んだもので、上位下位ではありません。

※ この記事は、中学受験をすすめるものでも、すすめないものでもありません。 進路の助言をする立場にないので、書いていません。
ここに出てくる率は、受験した子の割合ではありません。進学した先を数えたものです(本文05)。
※ 都教委の表が数えているのは、卒業した公立小学校の所在地です。学校選択制や越境通学があるため、 住んでいる場所と完全に一致するわけではありません。表の注にも住所の記載はありません。
※ 令和6年度の卒業生は、令和7年4月に中学校へ進学しています。 全国の数字は令和7年5月1日現在の中学1年生なので、同じ学年の子たちを、別の調査から見ています。
※ 「16.7倍」は、集計対象の51区市町村のうち、受験計がいちばん高い地区と いちばん低い地区の比です。順位を示すために出した数字ではありません。

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