Santa Works.
運転 / 公開データの整理

10年ぶりに同じデータを開いたら、
1割は1割のままでした。

盆休みに車で帰省する人は多いと思います。私もそうです。長距離を走る前に保険証券を眺めていて、Pythonを覚えたての頃、Excelの自動化・可視化や分析の練習の題材にこのデータを使ったことがあるのを思い出しました。車が好きで、その延長でたまたま行き着いたデータです。10年以上経って、同じものをもう一度開いてみました。

Santa Works2026.08.01読了 約6分出典つき / 一次資料から
87.6%
2015年3月末
未加入 1,004万台
88.6%
2025年3月末
未加入 943万台

対人賠償の普及率(自動車共済・自動車保険の計/全国)※1、※2

この記事のポイント

  1. 01対人賠償の普及率は全国88.6%。裏返すと943万台が入っていません。10年前は1,004万台で、割合はほとんど変わっていません
  2. 02同じ資料に75.4%と88.6%が両方あります。 違いは共済を数えたかどうかだけ。県別に見ると、 順位は47県中17県で20位以上動きます
  3. 03「お盆に事故が増える」を示す一次統計は、見つけられませんでした
まず、大きさ
01

943万台

損害保険料率算出機構が毎年「自動車保険の概況」という資料を出しています。その中に、都道府県別の対人賠償普及率という表があります※1

任意保険(対人賠償)の普及率(全国・2025年3月末)
共済も含めた数字。母数は保有車両 82,699,840台(一般原動機付自転車・特定小型原動機付自転車を除く)
88.6%
任意の対人賠償に入っている割合
保険会社ぶん+共済
943万台
入っていない台数
実数 9,435,233台(差引き)
約9台に1台
すれ違う車のうち
同上
「943万台」と「約9台に1台」は、原典の数値からこちらで計算したものです。 原典に直接その表記があるわけではありません。

10年前と比べてみます。2015年3月末の数字も同じ資料で公表されています※2。保有車両 80,670,393台に対して、対人賠償あり 70,629,762台。普及率は87.6%でした。

10年で1.0ポイント。台数では約61万台減っています。良くなってはいます。ただ、10年という時間の割には、ほとんど動いていないというのが率直な印象です。

ここまでは全国の話です。県ごとに見ると、どうなっているか。47都道府県ぶんを、そのまま並べます。

都道府県別の普及率(2025年3月末)
共済も含めた対人賠償。並びは都道府県コード順で、 順位ではありません※1
北海道86.3%
青森90.4%
岩手89.2%
宮城90.0%
秋田89.9%
山形90.9%
福島88.5%
茨城84.7%
栃木88.4%
群馬89.1%
埼玉88.0%
千葉85.8%
東京85.2%
神奈川86.7%
新潟91.4%
富山92.7%
石川91.7%
福井91.7%
山梨85.2%
長野89.4%
岐阜90.9%
静岡88.8%
愛知91.4%
三重89.7%
滋賀90.1%
京都89.3%
大阪87.9%
兵庫89.1%
奈良89.4%
和歌山89.7%
鳥取90.0%
島根92.1%
岡山90.0%
広島90.5%
山口90.6%
徳島91.2%
香川91.8%
愛媛91.3%
高知88.0%
福岡87.3%
佐賀90.5%
長崎88.0%
熊本89.0%
大分86.6%
宮崎85.1%
鹿児島83.4%
沖縄80.4%
050100%
縦の赤い線が全国平均の88.6%です。いちばん低い県で80.4%、 いちばん高い県で92.7%。どの県も8割を超えていますが、その差が何を意味するかは、次の章の話になります。
「お盆は事故が増える」と書きたくなりましたが、書けませんでした

警察庁の統計、交通事故総合分析センター、内閣府の交通安全白書を当たりましたが、盆期間を切り出した公表値を見つけられませんでした(年次と月次まではあります)。ですからこの記事では、増えるかどうかではなく、走る距離が伸びるという事実だけを前提にします。普段は近所しか運転しない人が高速を何百キロも走る。それだけで、すれ違う台数の母数が変わります。確率の話をしているだけで、誰かを疑う話ではありません。

数字が2つある理由
02

「任意保険の加入率」は、2つあります

「任意保険、入ってる?」と聞かれたら、たいていの人は入っているかどうかで答えます。保険会社と契約しているのか、共済なのかまでは、あまり意識しません。どちらも自分の意思で入る対人賠償で、事故のときに相手へ賠償されるという点では同じです。

ところが統計は、そこを分けています。同じ資料の、同じ時点の数字が2つ載っています。

75.4% — 保険会社ぶんだけ
  • 原典の表題任意自動車保険 都道府県別普及率表(第19表)
  • 台数62,343,349台
  • 共済数えていない
88.6% — 共済も入れて
  • 原典の表題自動車共済・自動車保険 都道府県別 対人賠償普及率(第31表)
  • 台数73,264,607台
  • 共済10,921,258台ぶんを加算

母数はどちらも同じ保有車両 82,699,840台、時点も同じ2025年3月末です※1違うのは、共済を数えたかどうかだけ。それだけで13.2ポイントずれます。

言葉のほうが、統計より広い

ややこしいのは、原典で「任意自動車保険」と名の付いた表のほうが、共済を含まないという点です。私たちが日常で使う「任意保険」は共済に入っている人も含みますが、 その名前の統計表は保険会社ぶんしか数えていません。言葉のほうが、表よりも広い。この記事では、日常の言い方に合わせて共済も含めた88.6%のほうを 「任意保険の加入率」として扱っています。

全国で13.2ポイントということは、県ごとに見ればもっと開きます。共済がどれくらい使われているかは、地域によってまったく違うからです。

県ごとのばらつき(2025年3月末・47都道府県)
いちばん高い県と、いちばん低い県の開き※1
27.5pt
保険会社ぶんだけで見たときの開き
55.2% 〜 82.7%
12.3pt
共済も入れたときの開き
80.4% 〜 92.7%
6.2
共済そのものの、県による差
5.2% 〜 32.4%
共済を入れると、県ごとの差は半分以下に縮みます。保険会社ぶんだけで見えていた「大きな地域差」の相当部分は、共済を数えていなかったことによるものでした。

差が縮むだけではありません。順位そのものが入れ替わります。

順位はどれくらい動くか
保険会社ぶんだけの順位 → 共済も入れた順位(47都道府県)※1
17
順位が20位以上動く
47県中
14
順位の動きの中央値
同上
5
保険会社ぶんだけなら下位10県、共済込みなら全国平均以上
全国平均 88.6%
特定の県が例外なのではありません。47都道府県のうち3分の1以上で、順位が20位以上動きます。順位表としては、ほぼ別物です。

同じ言葉で、
違うものが語られている

保険会社ぶんだけを数えた表を見て「この県は意識が低い」と読むと、事実と逆のことを言ってしまうことがあります。

この構造は、10年前も同じでした

2015年3月末で同じ計算をすると、保険会社ぶんだけの開きが28.9ポイント、共済も入れた開きが15.2ポイント※210年経っても、共済を数えるかどうかで景色が変わる構造は動いていません。変わったのは全国の普及率が1.0ポイント上がったことだけです。

この記事を、順位表として読まないでください

図には47県ぶんを並べていますが、並びは都道府県コード順で、順位ではありません。順位の話は、書き方しだいで「あの県は意識が低い」という読まれ方に転びます。この記事で言いたいのは県の優劣ではなく、数え方を確かめずに順位を眺めると読み違えるという一点です。 だから本文では、個別の県に触れていません。

車の種類で見ると
03

帰省で乗る車は、平均より高めです

同じ資料に、車種ごとの普及率を出した表もあります※3。こちらは共済を含まない数字なので、全体が75.4%になっている点だけ先にお断りしておきます。

用途・車種別の普及率(2025年3月末)
対人賠償。共済を含まない数字です※3
自家用普通乗用車83.2%
自家用小型貨物車80.8%
自家用小型乗用車78.4%
軽四輪乗用車77.9%
全体75.4%
軽四輪貨物車56.8%
二輪車47.2%
帰省で使うであろう乗用車は、いずれも全体より高めです。 一方で軽四輪貨物車は56.8%、二輪車は47.2%。同じ道路を走っていても、車種によって備えの厚みはかなり違います。
この数字の、慎重な読み方

「軽貨物や二輪は危ない」という話ではありません。ここに出ているのは保険会社との契約だけで、共済は数えられていません。 また車種ごとの使われ方(走行距離、業務用か否か、保有者の年齢構成)も まったく違います。車種の違いがそのまま人の違いを表すわけではない——この記事の主題からしても、そこは踏み外さないでおきます。

10年前の自分
04

もう一度、同じ表を開きました

10年経って、同じデータをもう一度開きました。全国の数字はほとんど動いていませんでした。87.6%が88.6%になっただけです。県ごとのばらつきの構造も、10年前とほとんど同じでした※1、※2

この10年で、47都道府県はどう動いたか
2015年3月末 → 2025年3月末の変化(共済も含めた普及率)※1、※2
45
普及率が上がった
下がったのは2県
+1.2pt
変化の中央値
幅は −0.1 〜 +4.1
40
共済の割合が下がった
保険の割合は46県で上昇
ほとんどの県で少しずつ上がっています。ただ中央値は+1.2ポイントで、10年という時間を思うと小さい。そして共済から保険へ、静かに置き換わっているのが分かります。この記事で私が読み違えていた「共済の列」は、10年かけて少しずつ細くなっていました。

当時、共済の列を見ていたか。たぶん、見ていません。普及率という言葉のついた表を開いて、県ごとに並べて、上と下を眺めて、それで満足していたと思います。

共済の数字は、同じ資料の中にありました。私が開かなかっただけです。

変わっていたのは、データではなく、私の見方のほうでした。

帰省の前に
05

私が自分の保険証券で見たところ

私は保険の専門家ではありません。どの保険に入るべきか、どの特約が要るかは書けませんし、書くべきでもないと思います。ここに並べるのは、私が自分の保険証券を開いて確認した3つだけです。

出発前に自分の契約で見たところ
一般化した助言ではありません。私がやったことの記録です
対人・対物の金額いくらまで出る契約になっているか
自分と同乗者側の補償家族を乗せて長距離を走るので
相手が無保険だったときに、自分の契約側で何が起きるか恥ずかしながら、今回はじめてちゃんと読みました

943万台という数字を見たあとだと、③の読み方が変わります。相手の備えは、こちらでは選べません。

この記事の芯
06

数字は、どう切るかで別の顔になります

これは保険に限った話ではありませんでした。自分のサービスの利用者数でも、子どもに関する統計でも同じです。母数と定義を確かめないまま眺めた数字は、だいたい自分に都合よく見える。

帰省の前に保険証券を開いてみたら、
10年前の自分の宿題が出てきた。

そういう話でした。この記事の数字は、すべて出典のPDFから直接引いています。間違いを見つけたら教えていただけるとありがたいです(contact@santaworks.net)。直します。

道中、お気をつけて。

参考文献・出典

  1. ※1 損害保険料率算出機構「2025年度(2024年度統計)自動車保険の概況」 giroj.or.jp/publication/outline_j/j_2025.pdf
    第31表「自動車共済・自動車保険 都道府県別 対人賠償普及率〈2025年3月末〉」および第19表「任意自動車保険 都道府県別普及率表〈2025年3月末〉」より。第19表の対人賠償欄は第31表の「自動車保険」列と一致します(本記事で16県を照合し全件一致)。全国計(保有車両 82,699,840台/共済 10,921,258台・13.2%/保険 62,343,349台・75.4%/計 73,264,607台・88.6%)。ばらつきと順位に関する数値は、同表の都道府県別47件をすべて用いて本記事で算出しました(保険のみの最小・最大=55.2%・82.7%、共済・保険計の最小・最大=80.4%・92.7%、共済の最小・最大=5.2%・32.4%)。本文では個別の県に言及していません(図には47県ぶんを都道府県コード順で並べています)。原典の表でもご確認いただけます。
  2. ※3 同上(2025年度版)第18表「任意自動車保険 用途・車種別普及率表〈2025年3月末〉」。 対人賠償の普及率(自家用普通乗用車83.2%/自家用小型貨物車80.8%/自家用小型乗用車78.4%/ 軽四輪乗用車77.9%/軽四輪貨物車56.8%/二輪車47.2%/合計75.4%)。この表は自動車共済を含みません。合計75.4%は第31表の「自動車保険」列と一致します。
  3. ※2 損害保険料率算出機構「自動車保険の概況(2015年度)」 giroj.or.jp/publication/outline_j/j_2015.pdf
    第32表「自動車共済・自動車保険 都道府県別 対人賠償普及率〈平成27年3月末〉」より。全国計(保有車両 80,670,393台/共済 11,105,110台・13.8%/保険 59,524,652台・73.8%/計 70,629,762台・87.6%)。10年前のばらつき(保険のみ 28.9ポイント、共済・保険計 15.2ポイント)も、同表の47件から本記事で算出しました。

※ 本記事は公表されている統計をもとに構成しています。数値は各調査時点のものです。
※ 原典の用語は「加入率」ではなく「普及率」で、対人賠償についての数値です。車両保険や対物賠償の普及率とは異なります。
※ 本記事の「任意保険」は共済を含む言い方です。原典で「任意自動車保険」と題された表(第19表)は共済を含まず、その全国値は75.4%になります。
※ 保有車両数は「自動車保有車両数・月報」(自動車検査登録情報協会)から作成され、 一般原動機付自転車および特定小型原動機付自転車を除きます。都道府県合計には都道府県不明分を含みます。
原典に載っていない数値は、すべて本記事の計算です。具体的には「943万台」「1,004万台」「約61万台」「約9台に1台」(保有台数と付保台数の差)、 および「27.5/12.3/28.9/15.2ポイント」「6.2倍」「17県」「中央値14位」「5県」 (都道府県別47件から算出したばらつきと順位)、「45県/2県」「中央値+1.2ポイント」 「40県」「46県」(2015年と2025年の47件を突き合わせた10年の変化)。 原典が示すのは各県の台数と普及率までです。
※ 本記事は保険・法律・金融上の助言を目的とするものではありません。ご自身の契約内容については、契約先の窓口にご確認ください。

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