出会い方の「当たり前」には、
始まった年がありました
「見合い結婚」と聞くと、ずいぶん昔の話だと思っていました。 調べてみたら、1930年代に結婚した夫婦の69.0%が見合い結婚。 そして恋愛結婚がそれを追い抜くのは、1960年代の後半でした。 いま「普通」だと思っている出会い方は、そんなに古いものではありませんでした。
- 011930年代の見合い結婚は7割。戦後もしばらく、多数派です。
- 02恋愛結婚が見合いを抜いた5年間は不明。差が小さく信頼区間が公表されていません。
- 03いちばん新しい数字はコロナ禍。 報告書が注でそう書いています。
見合い結婚が、7割だった
国立社会保障・人口問題研究所が続けている調査があります※1。夫婦に「どのようなきっかけでお知り合いになりましたか」と 聞いて、答えを結婚した年ごとに並べたものです。
1930年代に結婚した夫婦のうち、69.0%が見合い結婚でした。 恋愛結婚は13.4%。戦後もしばらく、見合いのほうが多数派です。
⚠️ ここでの「見合い結婚」は、調査の分類名です。 知り合ったきっかけを「見合いで」または「結婚相談所で」と答えたものを こう呼んでいます。それ以外——学校で、職場で、友人を通じて、街なかで、 アルバイトで——を「恋愛結婚」としてまとめています※1。恋愛があったかどうかを聞いた数字ではありません。
⚠️ 対象は初婚どうしの夫婦だけです。 そして図の点は、第7回(1977年)から第16回(2021年)までの 10回ぶんの調査をつないだもので、同じ調査をずっと続けた系列ではありません。
どの5年かは、特定できませんでした
1960〜64年に結婚した夫婦は、恋愛41.1%・見合い49.8%。 1970〜74年は、恋愛61.5%・見合い33.0%※1。この10年のあいだに、入れ替わっています。
ではどの5年で抜いたのか。あいだの1965〜69年は48.6%対44.9%で、差は3.7ポイント。
🔴 ここで、資料が尽きます。図には95%信頼区間のエラーバーが描かれているのに、その数値がどこにも公表されていません。しかもこの年の数字は1977年の調査から来ているので、 いま確かめる手立てもありません。
なので、この記事が言えるのは「1960年代の後半に入れ替わった」までです。 前後がはっきり分かれているので、どこかで交差したこと自体は確かです。
当たり前になってから、まだ60年
恋愛結婚が7割を超えるのは1980〜84年(72.6%)。8割は1985〜89年(80.2%)です※1。 1990年代の終わりには87%台に達し、そこで頭打ちになります。
つまり、いま「普通」だと思っている出会い方が多数派になってから、 まだ60年ほど。7割を超えてからだと、40年ほどしか経っていません。
⚠️ 印を打ったのはその水準を最初に超えた区間です。 区間は5年ごとなので、超えた年そのものは、やはり分かりません。
いちばん新しい点は、コロナで動いていた
いちばん新しい数字(2019〜21年の結婚)は恋愛結婚74.8%で、 急に下がって見えます。これは傾向として読めません。
報告書が、注でそう書いているからです※2。2020年の初婚数は、前年の38万件から33万件へ大きく減少。構成割合の上昇は、必ずしも発生の増加を意味しない。
実際に動いたのは「職場や仕事で」。28.2%から21.4%へ。 コロナ下で、職場から始まる結婚そのものが減った、ということです※2。 職場は「恋愛結婚」に分類されるので、その減りがそのまま恋愛結婚の割合を下げます。
同じ期間に「見合い結婚」は6.4%から9.0%へ、 「ネットで」は6.0%から13.6%へ上がっています※2。 けれどこれも「増えた」とは書けません。分母のほうが痩せているからです。
⚠️ そのうえ「ネットで」は、この回で新しく作られた選択肢です※2。前の回まではこの答え方ができませんでした。増えた分に、選択肢を作った効果が混ざっています。
見合いは、無くなっていませんでした
見合い結婚は無くなっていません。 最新3年間の結婚を妻の初婚年齢で分けると、30〜34歳で13.3%、35歳以上で26.9%が見合い結婚です※3。
⚠️ この数字を、FIG 01の9.8%と並べないでください。FIG 01は結婚した年で、こちらは妻の初婚年齢で分けたものです。母数が違うので、比べられません。
ひとつ気づいたことがあります。この調査で「見合い結婚」に入るのは、「見合いで」と「結婚相談所で(オンラインを含む)」です。 一方、SNSやマッチングアプリは「ネットで」に入ります※1。分けているのは仕組みではなく、窓口の名前でした。
次の「当たり前」は、いまここにいます
では、いま「普通」なのは何なのか。アプリだろうと思っていました。けれど、いちばん新しい数字で多いのは「友人・兄弟姉妹を通じて」25.9%、次が「職場や仕事で」21.4%です※2。「ネットで」は13.6%で、4番目でした。
上の図のとおり、2019〜21年に結婚した夫婦の「ネットで」は15.1%。 そして1930年代の「恋愛結婚」は13.4%でした※1。いま出てきたばかりの出会い方は、90年前の恋愛結婚とほぼ同じ高さにいます。
⚠️ 13.6%と15.1%は、別の集計です。13.6%は調査別、15.1%は結婚年次別で、母数の切り方が違います。足したり、並べて比べたりはできません。そして同じ道を辿る、という意味でもありません。この15.1%には選択肢を新設した効果とコロナで婚姻そのものが減った効果が混ざっています。言えるのは、いまの水準が並んでいるということだけです。
そして「今」の数字は、まだ誰も公表していません。この調査が見ているのは2021年6月までに結婚した夫婦で、 それより後の5年間は空白です。第17回は2025年6月に実施済みですが、結果は出ていません※4。
当たり前だと思っていた
調べる前、私は見合い結婚を「昔の話」だと思っていました。
60年前のことでした。自分が生まれるより少し前まで、そちらが多数派だった。 それを「昔」と呼んでいたのは、自分が生まれたときにはもう終わっていたからにすぎません。
もうひとつ、調査の分かれ方が引っかかりました。 結婚相談所はオンラインでも「見合い」で、マッチングアプリは「ネットで」。やっていることは近いのに、名前が違うだけで別の枠に入ります。けれど私自身、この二つを同じものとして考えていませんでした。なぜ分けていたのかは、説明できません。
TOKYO縁結びを、数える
東京都は、自前でマッチングのシステムを持っています。「TOKYO縁結び」、令和6年9月20日開始※5。 令和8年6月30日現在の累計で、申込は約36,000人、登録まで進んだのは約16,000人です※5。
⚠️ 宣伝ではありません。ここで都のシステムを扱っているのは、件数が公表されていて、数えられるからです。
⚠️ 申込と登録の差が何なのかは、わかりません。途中でやめたのか、いま手続きの最中なのか、別の理由なのか、 公表されている数字では分けられません。入口で数が半分以下になっている、というところまでです。
事業の是非は、この記事では扱いません。 ただ、ひとつ書けることがありました。恋愛結婚が見合いを抜いた5年間は、特定できませんでした。けれどこの窓口が始まった日は、分かります——令和6年9月20日※5。いま始まったものには、日付が残ります。
おわりに
「当たり前」には、
始まった年がある。
この記事で分かったのは、出会い方の構成比が動いたということだけ。 どの出会い方が良いかを言うつもりもありませんし、この調査はそれを聞いていません。
分からなかったことも、はっきりしました。入れ替わった5年間は特定できず、いちばん新しい数字はコロナと切り分けられませんでした。 調べるほど、書けないことが増えます。
いま当たり前でない出会い方も、60年後には誰かの「当たり前」になっているのだと思います。
この記事の数字は、すべて出典の一次資料から直接転記、 または公開されている図表から読み取ったものです。 間違いを見つけたら教えていただけるとありがたいです(contact@santaworks.net)。直します。
参考文献・出典
- ※1 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に 関する全国調査)現代日本の結婚と出産」第Ⅱ部 夫婦調査の結果、 図表5-2-1「結婚年次別にみた、恋愛結婚・見合い結婚の構成割合」。調査は2021年6月実施、報告書は2023年8月公表。 対象は初婚どうしの夫婦で、第7回(1977年)から第16回までの調査を つないだ系列です。「見合い結婚」は知り合ったきっかけが 「見合いで」「結婚相談所で(オンラインを含む)」の結婚、 それ以外を「恋愛結婚」として集計しています。
- ※2 同 図表5-2-2「調査別にみた、夫と妻が知り合ったきっかけの構成割合」 および本文。「ネットで」は第16回で新設された選択肢です。 初婚数の減少(38万件→33万件)は、報告書の注が 厚生労働省「人口動態統計」から引用しているものです。
- ※3 同 図表5-2-3「調査・妻の初婚年齢別にみた、夫妻が知り合ったきっかけの 構成割合」および本文。最新3年間(2018年7月〜2021年6月)の結婚が対象です。
- ※4 第17回調査は2025年6月30日に実施されていますが、 本記事の執筆時点で結果は公表されていません。
- ※5 東京都生活文化局「結婚支援マッチング事業Q&A」。 実績は令和8年6月30日現在の累計で、申込数 約36,000人、 登録者数 約16,000人、真剣交際組数 760組、成婚組数 265組。 同ページの注により、「登録者数」は申込後に入会面談や必要書類の提出等の 手続を完了し、システムを利用できるようになった人数、「真剣交際組数」は新たな紹介および他の相手との交際を中止した組数です。事業の開始は令和6年9月20日。
※ FIG 01の系列は10回ぶんの調査をつないだもので、 同一の調査を継続した系列ではありません。集計対象(妻の年齢の条件)も 回ごとに異なります。
※ すべて初婚どうしの夫婦が対象です。 どちらかが再婚の夫婦は別の集計になっており、そちらでは 「仕事や職場で」が最多です。
※ 入れ替わった5年間は特定していません。1965〜69年の差は3.7ポイントで、図に描かれた95%信頼区間の数値が 公表されていないためです。
※ 2019〜21年の結婚は新型コロナウイルス感染拡大期を含みます。この期間の構成割合は、婚姻そのものが減った状況下のものです。
※ FIG 07は「人」と「組」が混ざっています。申込・登録は人数、真剣交際・成婚は組数なので、同じ物差しには載せていません。すべて累計で、手続の途中の人も 含まれます。割合は出していません。
※ FIG 07は東京都の1事業の数字で、全国のマッチングアプリの利用実態ではありません。
※ FIG 05は妻の初婚年齢で分けたもので、 結婚年次で分けたFIG 01とは母数が違います。並べて比べられません。