2026年7月28日に発生した、熊本県熊本地方を震源とする地震により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆さまに謹んでお悔やみを申し上げます。いまも安否の分からない方の一日も早い救出と、被災された地域に穏やかな日常が戻ることを願っております。
昔の夏は涼しかった、を
50年分の記録で確かめました
最近、夏の暑さに耐えられなくなってきました。こどもの頃は、こうではなかった気がします。ただ、これは年齢のせいかもしれません。「昔はよかった」は、いちばん疑ったほうがいい種類の記憶です。だから、公開されている気温の記録で確かめました。
この記事のポイント
- 01東京の猛暑日は、10年平均で1.4日から13.0日へ。「昔は涼しかった」は本当でした
- 02猛暑日が1日もない夏が、かつては2年に1回あった。直近10年はゼロ
- 03暑い日が増えただけでなく、夏の期間が前後に伸びた。6月末から9月半ばまで
- 04確かめる途中で計算が合わなくなった。東京の観測地点は2014年に引っ越していた
50年分を開いてみました
こどもの頃の記憶で、ひとつはっきりしているものがあります。夏の朝、「今日は30度を超えるらしい」という話が、家族のあいだで出ました。テレビだったか、ラジオだったか。だれかがそう言って、みんなが少し身構える。
30度は、わざわざ口に出す数字でした。いまは、その言い方をしません。
気象庁の「過去の気象データ検索」から、東京の日ごとの気温を落としました。1976年から2025年まで、6月1日から9月30日まで。50年 × 122日 ぶんです。
見るのは気温そのものではなく、日数にしました。「あの年は平均何度でした」は覚えていませんが、「暑い日が何日続いたか」なら、体が覚えているはずだからです。
数えたのは猛暑日(最高気温35℃以上)と真夏日(同30℃以上)の2つ。
猛暑日は、1.4日から13.0日になっていました
猛暑日は、1.4日から13.0日になりました
東京・6〜9月に日最高気温が35℃以上だった日数/10年ごとの平均
気のせいではありませんでした。私がこどもだった頃の東京の夏には、35℃を超える日が、10年の平均で年に1.4日しかありません。いまは13.0日あります。
真夏日のほうも、41.1日から64.4日へ。3週間ぶん以上増えています。朝の話題になっていた30度は、いまは夏のあいだに64日あります。
ちなみに直近の2025年は、猛暑日29日、真夏日87日でした。猛暑日は、50年でいちばん多い年です。真夏日のほうは、2023年の88日に次いで2番目でした。
「猛暑日のない夏」が、半分ありました
平均の話をすると、どうしても薄まります。年ごとに並べたほうが、たぶん体感に近い。
35℃を超えない夏。それが2年に1回あった、ということになります。私が覚えている「涼しかった夏」は、たぶんこのどれかです。
暑い日が増えたのではなく、夏が伸びていました
平均も年ごとの数も、結局は「何日あったか」の話です。いつあったかを見ていませんでした。
そこで、50年ぶんの猛暑日を1日ずつ打ってみました。1年を1本の線にして、50年ぶんを並べています。
猛暑日を、1日ずつ打ってみました
東京・35℃以上の日/1976〜2025年の6月1日〜9月30日
古い年のほうが、私の覚えている夏です。点がまばらで、8月に固まっています。1976年から1985年でいちばん早い猛暑日は8月7日、いちばん遅くて9月3日でした。
新しい年へ進むほど点が増え、そして夏の前後へ広がります。2022年は6月25日に始まり、2024年は9月18日まで続きました。
暑い日が増えたというより、夏そのものが前後に伸びた、という言い方のほうが近そうです。耐えられなくなったのは、暑さの高さではなく、長さのほうかもしれません。
これは東京だけの話でしょうか
ここで、当然の疑問が出ます。東京はビルとアスファルトが増えました。都市が暑くなっただけではないか、と。
気象庁は長期変化の分析に、都市化の影響が比較的少ない15地点を使い分けています。そのうち5地点について、夏(6〜8月)の平均気温を30年ずつ区切って計算しました。平年値と同じつくり方です。
都市化の影響が少ない5地点でも、上がっています
夏(6〜8月)の平均気温・30年平均
5本とも、右上がりでした。上がり幅は石巻の+0.38℃から彦根の+0.89℃まで。
日数でも同じです。山形の猛暑日は、1976–1985年の平均3.7日から、2016–2025年は11.4日になっていました。東京だけの話ではありませんでした。
暑さを測っていたら、ものさしが動いていました
ここまで書いて、ひとつ気づいたことがあります。
上の図と同じやり方で、東京の1991年から2020年の平均を出したら、7月は26.31℃になりました。ところが気象庁が公表している東京の7月の平年値は、25.7℃です。0.6℃ずれています。
計算を間違えたのかと思って確かめると、そうではありませんでした。東京の観測地点は、2014年12月2日に引っ越しています。大手町から、北の丸公園へ。
§04 の図に入れた点線が、この移転です。点線より右は、別の場所で測った値だということになります。
私の計算がずれていたのは、公表されている平年値が移転を補正した値で、私が使ったのが補正前の生の観測値だったからでした。計算は合っていて、意味が違っていた、ということになります。
平年並みの、平年が動いています
平年値には、もうひとつ知らなかったことがありました。
平年値は10年ごとに更新されます。いま使われているのは1991年から2020年の30年平均で、2021年5月19日から運用が始まりました。2030年まで使われます。
気象庁の発表によれば、その更新で年平均気温は全国的に0.1〜0.5℃高くなりました。さくらの開花は、ほとんどの気象官署で1〜2日早くなっています。
つまり、天気予報で聞く「今日は平年並みです」の平年は、10年ごとに書き換わっています。私がこどもの頃に聞いた「平年並み」と、今朝聞いた「平年並み」は、違う数字を指しています。
基準が一緒に動いていると、ズレは感じにくくなります。
覚えていたことは、正しかった
50年分を見て、分かったことを並べます。
- 昔の夏が涼しかったのは、本当でした。猛暑日は1.4日から13.0日へ
- 猛暑日のない夏が、2年に1回あった。いまは10年で1年もない
- 暑い日が増えただけでなく、夏の期間そのものが前後に伸びた
- 都市化の影響が少ない5地点でも、夏の平均気温は上がっている
- ただし東京の記録は、途中で観測場所が引っ越している
最後にひとつだけ。この記事の東京の猛暑日13.0日は、たぶん少なめに出ています。気象庁の比較観測によれば、猛暑日の日数は北の丸公園のほうが少なく出るからです。2015年以降がその新しい場所の値なので、大手町のままだったら、もう少し多かったことになります。
控えめに見積もって、9倍でした。
私の体力は、たしかに落ちているのだと思います。それはそれとして、夏のほうも変わっていました。両方本当だった、というのが、50年分を開いてみた結論です。
記憶は、答え合わせをする相手がいて初めて、記憶のままでいられます。
覚えていたことが正しかったと分かるのは少し嬉しく、それを確かめてくれたのは記録でした。
それにしても、近年の夏は暑すぎます。
皆さまも、どうか無理をなさらず、熱中症にはお気をつけてお過ごしください。
参考文献・出典
すべて気象庁の公開データ・公表資料です。日別値・月別値は 2026-07-29 に取得しました。
- 気象庁「過去の気象データ検索」 data.jma.go.jp/stats/etrn/
東京 47662/山形 47588/彦根 47761/宮崎 47830/伏木 47606/石巻 47592。日別値(6〜9月・1976〜2025年)と月別値を使用。 - 気象庁「日本の平均気温偏差の算出方法」 ds.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/clc_jpn.html
都市化の影響が小さい15地点(網走・根室・寿都・山形・石巻・伏木・飯田・銚子・境・浜田・彦根・宮崎・多度津・名瀬・石垣島)。本記事はこのうち5地点を使用。 - 気象庁「観測場所の移転に伴う気温データの補正方法について」 data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/correction.html
- 気象庁観測部「『東京』の観測地点の移転について」(2014年11月14日) jma.go.jp/jma/kishou/minkan/koushu141114/shiryou1.pdf
同時比較観測(2012年4月〜2014年3月の2年平均)の結果と、平年値の更新(平均気温 16.3℃ → 15.4℃)。 - 気象庁「地上観測地点『東京』の移転について」(2014年10月3日) jma.go.jp/jma/press/1410/03b/20141003_tokyo_rojo.html
- 気象庁「平年値の更新について」(2021年3月24日) jma.go.jp/jma/press/2103/24a/210324_heinenchi.html
- 気象庁「東京(東京都)平年値(年・月ごとの値)」 data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php
※ 集計期間は1976年から2025年の50年、6月1日〜9月30日(122日)のみ。猛暑日=日最高気温35.0℃以上、真夏日=同30.0℃以上。
※ 30年平均は平年値と同じく30年ぶんの月平均気温を単純平均したもので、 移転補正をしていない生の観測値のため、気象庁が公表している平年値とは一致しません。
※ 1994年の東京に日最低気温の欠測が1日ありますが、本記事では最低気温を使用していません。 山形の観測所に移転があったかどうかは確認していません。移転があれば、日数の推移にその影響が含まれます。
※ 東京の熱帯夜(日最低気温25℃以上)は使用していません。移転で最低気温が約1.4℃低く出るため、 日数の推移が観測場所の変更を反映してしまうためです。