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「3年は続けろ」の3年を、
国も数えていました

国の統計に「3年以内離職率」というものがあります。 大学を出て就職した人のうち、3年以内に辞めた人の割合です。 いちばん新しい数字は33.8%。30年前は33.6%でした。 30年ぶんを並べても、この数字は「3割」から出ていません。

Santa Works2026.08.18読了 約6分出典つき / 一次資料から
大卒の3年以内離職率・30年の差0.2ポイント33.6% → 33.8%
離職した人のうち1年目に辞めた割合41.7→35.5%3年目は26.2→29.4%に増えました
「離職」の理由による区別はなし転職も家庭の事情も会社都合も同じ1件
  1. 013年以内離職率は30年ほぼ同じ。大卒で0.2ポイントしか動いていません。
  2. 02動いたのは、辞める時期のほう。1年目が減り、3年目が増えています。
  3. 03「離職」に理由は入っていません。雇用保険の記録を数えたものです。
まず、言われたことから
01

「3年は続けろ」と言われた

新入社員のころ、親に「3年は最低続けろ」と言われました。 当時、そういうものだと思っていたしフレッシュな気持ちもありました。 楽しかったし、我慢もしたし、社会というものを少し学んだように記憶しています。

同じ「3年」が、統計にもある
02

三割は、30年前から三割でした

FIG 01
三割は、30年前から三割でした
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
01020304033.6%33.8%1996年3月卒2022年2004年2009年大学を出て就職した人のうち、3年以内に辞めた人(%)27年ぶんが 28.8〜36.6% の中に収まっている
01020304033.6%33.8%1996年3月卒2022年2004年2009年大学を出て就職した人のうち、3年以内に辞めた人(%)27年ぶんが 28.8〜36.6% の中に収まっている
縦軸は0から取っています。27年ぶんの上下を拡大すると、動いていないものが動いて見えるためです。

厚生労働省が毎年、新規学卒就職者の離職状況を公表しています※1。大学を出て就職した人のうち、3年以内に辞めた人が何%か。 いちばん新しい数字は33.8%(2022年3月に卒業した人)でした。

30年前、1996年3月に卒業した人は33.6%差は0.2ポイントです。あいだの27年も、いちばん低い年で28.8%、高い年で36.6%。 上下はしていますが、「3割」から出ていません。

増えてはいない、ということです。

学歴で分けてみる
03

動いたのは、中卒と高卒だけでした

FIG 02
動いたのは、中卒と高卒だけでした
同上
30年前と、いちばん新しい数字(3年以内離職率・%)1996年3月卒2022年3月卒中学54.171.0就職した人 7,472人 → 675人高校37.948.1短大等41.244.5大学33.633.8中学卒は母数が9割減っている。率だけを並べて比べられない
30年前と、いちばん新しい数字(3年以内離職率・%)1996年3月卒2022年3月卒中学54.171.0就職した人 7,472人 → 675人高校37.948.1短大等41.244.5大学33.633.8中学卒は母数が9割減っている
中学卒の母数は30年で9割減っています(7,472人 → 675人)。54.1%は675人のうち365人の話で、ほかの3つと同じようには読めません。

4つの学歴を、30年前と並べてみます。 中学卒71.0% → 54.1%、高校卒48.1% → 37.9%、 短大等卒41.2% → 44.5%、大学卒33.6% → 33.8%

下がったのは、中卒と高卒だけです。大卒は動いていません。短大等は、少し上がっています。 30年で3割ほど下がった学歴と、まったく動かない学歴が、同じ表に並んでいます。

ただ、中卒の54.1%は675人のうち365人の話です。 30年前は7,472人が就職していました。母数が9割減っています。率だけを並べると、大きな集団のことのように見えてしまいます。

転調 ── 合計の中身を開く
04

辞める人は増えていなくて、辞める時期が動いていました

FIG 03
辞める人は増えていなくて、辞める時期が動いていました
同上
3年以内に辞めた人を100としたときの、何年目に辞めたか(%)1年目2年目3年目大学卒1996〜0041.732.126.22001〜0542.431.725.82006〜1041.132.126.82011〜1539.632.028.42016〜2035.733.930.42021〜2235.535.229.4高校卒1996〜0050.929.619.52001〜0551.729.119.22006〜1051.428.220.42011〜1548.429.022.62016〜2044.030.625.42021〜2245.431.123.55年ごとの平均(いちばん下だけ2年ぶん)
3年以内に辞めた人を100としたときの、何年目に辞めたか(%)1年目2年目3年目大学卒1996〜0041.732.126.22001〜0542.431.725.82006〜1041.132.126.82011〜1539.632.028.42016〜2035.733.930.42021〜2235.535.229.4高校卒1996〜0050.929.619.52001〜0551.729.119.22006〜1051.428.220.42011〜1548.429.022.62016〜2044.030.625.42021〜2245.431.123.55年ごとの平均(いちばん下だけ2年ぶん)
合計は変わっていません。中身の順番が入れ替わっただけです。なぜ後ろにずれたのかは、この資料からは分かりません。

合計が動いていないなら、中身も動いていないのか。そうではありません。3年以内に辞めた人を100として、何年目に辞めたかを見ます。

大卒。30年前は1年目が41.7%、3年目が26.2%でした。 直近は1年目が35.5%、3年目が29.4%1年目が減って、3年目が増えています。高卒も同じ向きでした(1年目 50.9 → 45.4/3年目 19.5 → 23.5)。 2つの学歴がそろって同じ向きに動いているので、その年だけの揺れではなさそうです。

辞める人は増えていない。辞める時期が、後ろにずれている。

「3年は続けろ」と言われるから3年目に寄った——と書きたくなりますが、それは言えません。景気も、転職のしやすさも、育てる側の事情も、この30年で動いています。

FIG 04
「すぐ」のほうは、1996年以降でいちばん低い
同上
0510152014.1%10.1%10.6%1996年3月卒2020年2024年2000年大学を出て就職した人のうち、1年目に辞めた人(%)3年以内ではなく、1年目だけ。2024年3月卒まで数え終わっている
0510152014.1%10.1%10.6%1996年3月卒2020年2024年大学を出て就職した人のうち、1年目に辞めた人(%)1年目だけ。2024年3月卒まで数え終わっている
3年以内ではなく、1年目だけの数字です。3年以内離職率が数え終わっているのは2022年3月卒までで、この2つを混ぜて読むことはできません。前年の公表版と突き合わせたところ、届出の遅れによる上振れは0.1ポイントでした。

ここまでは、3年ぶん数え終わった人たちの話です。 まだ3年経っていない人たちも、1年目だけなら数え終わっています※3。 2024年3月に卒業した大卒の1年目は、10.1%1996年以降で、いちばん低い数字です。

⚠️ ここで言えるのは1年目だけです。2023年・2024年3月卒はまだ3年経っていないので、3年以内離職率が下がった、とは書けません。また、これは大卒の話で、高卒の1年目(16.6%)は最低ではありません (最低は2020年3月卒の15.1%)。

転調 ── 数え方を読む
05

この数字の「辞めた」には、理由が入っていません

ここまで「辞めた」と書いてきました。 けれど、この統計の「離職」はこう定義されています※2

離職理由や離職後の就業の状態に関わらず離職者として算出している

厚生労働省「資料出所及び離職率の集計の考え方」

転職も、家庭の事情も、会社都合も、同じ1件です。「辞めた」は、「続かなかった」ではありません。

そもそもこれは調査ではなく、雇用保険の加入と離職の記録です。 新卒かどうかも、生年月日と加入した時期からの推定。 本人には聞いていません。雇用保険に入らなかった人は、はじめから入っていません。

数え方が雑なのではありません。行政の記録なのだから、そうなります。 知らずに読むほうの問題です。私はずっと、この数字を「続かなかった人の割合」だと思って見ていました。

3年の外側
06

3年で切ると、その先が見えない

4年目に辞めた人は、この数字に入りません。「3年以内」の外に出てしまえば、統計のうえでは辞めなかった人です。

私はそこにいます。 でもその欄は、3年と1か月で辞めた人と、定年まで勤めた人と、私を、区別していません。

おわりに

「3年は続けろ」と言われた3年と、国が数えている3年は、同じところにあります。 でも、測っているものが違いました。 片方は、続けられたかどうか。もう片方は、いつ辞めたか。

同じ線に見えて、別のものを分けていました。

この記事の数字は、すべて出典の一次資料から直接転記、 または公開されている表から計算し直したものです。 間違いを見つけたら教えていただけるとありがたいです(contact@santaworks.net)。直します。

参考文献・出典

  1. ※1 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」 令和7年10月24日公表。数値は同資料の表 「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」から、 就職者数と離職者数をもとに計算し直しています。 対象は平成8年3月卒から令和4年3月卒までの27年ぶん、 学歴は中学・高校・短大等・大学の4区分です。
  2. ※2 同「資料出所及び離職率の集計の考え方」。 事業所からハローワークに提出された雇用保険の加入届をもとに、 生年月日・加入日・資格取得理由から新規学卒者と推定される就職者数を算出し、 その離職日から離職者数・離職率を出しています。 離職者は離職理由や離職後の就業の状態に関わらず算出されます。
  3. ※3 「1年目」は日付で決まる区間(卒業年3月1日〜翌年3月31日)で、 観測はどの期も区間の終わりから3か月後(6月時点)です。 前年の公表版(令和6年10月25日)と突き合わせたところ、3年ぶん数え終わった期の数値は1つも変わっておらず、 同じ熟度どうしの改定は0.1ポイントでした (2023年3月卒 10.9% → 11.0%)。

3年以内離職率が数え終わっているのは2022年3月卒までです。2023年・2024年3月卒はまだ3年経っていません。
※ FIG 04は1年目だけの数字で、FIG 01(3年以内)とは 数え終わっている範囲が違います。並べて1本の線として読めません。
※ 中学卒の就職者は30年で7,472人から675人に減っています。54.1%は675人のうち365人の話で、ほかの3つと同じようには読めません。
※ この統計の「離職」に理由は入っていません。転職も、家庭の事情も、会社都合も同じ1件として数えられています。
※ 分母は雇用保険に加入した人だけです。 就職しなかった人や、加入しない働き方は入っていません。
辞める時期が後ろにずれた理由は書いていません。この資料からは分からないためです。
※ 事業所規模別・産業別の数字は、この記事では扱っていません。 差の大きい項目ですが、原因の説明にはならないためです。

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